オオシラビソ Abies mariesii

植物 > 裸子植物 > マツ目 > マツ科 > モミ属

岐阜県飛騨市 標高約1400m 2014/9/21
※分布図は目安です。

分布1):本州(東北~中部)。北限は青森県八甲田山、西限は福井県二ノ峰。

本州の亜高山帯の針葉樹林を代表する樹種の一つ。シラビソ、コメツガ、トウヒなどと混生する。別名オオシラベ、アオモリトドマツ。

オオシラビソの概要

花期1)6月
希少度★(普通)
大きさ1)高さ25-30m、幹径80-90㎝
生活形1)常緑高木
生育環境亜高山帯
別名オオシラベ、アオモリトドマツ

オオシラビソの形態

葉と枝

岐阜県飛騨市 標高約1400m 2014/9/21

葉は長さ20mmほどまで。シラビソより幅広く短い。上から見た時、枝が葉で隠れて見えにくいのが特徴(シラビソは枝がよく見える)2)

岐阜県高山市 標高約2100m 2019/8/17

葉裏は2本の白い気孔帯があり、白く目立つ。

岐阜県高山市 標高約2100m 2019/8/17

若枝は赤褐色の短毛が密生する2)。シラビソにも灰褐色の毛がある。ウラジロモミは無毛。

岐阜県高山市 標高約2100m 2019/8/17

毛が黒くなって残った枝。

球果(松ぼっくり)

岐阜県飛騨市 標高約1400m 2014/9/21

長さ6-9㎝、黒紫色で年内に熟す1)。シラビソよりも大きい。

樹皮

岐阜県高山市 標高約2100m 2019/8/17

樹皮は灰色で平滑。シラビソとよく似る。

岐阜県飛騨市 標高約1400m 2014/9/21

樹脂のある部分が横長に膨らむ(ヤニ袋)2,3)。同様の特徴はシラビソの樹皮にもみられる。

識別

日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
また、モミ属全種の比較表については「モミ属」のページをご参照ください。

識別のポイント

日本産モミ属は他に4種ある(モミ、ウラジロモミ、シラビソ、トドマツ)。特にシラビソとはよく混生するので注意。トドマツは北海道以北にあり、分布が重ならない。

オオシラビソとシラビソの違い

オオシラビソのほうが葉が幅広く短い。
また、オオシラビソは枝葉を上から見た時、枝が葉に隠れてよく見えない。一方、シラビソは隙間が大きく枝がよく見える2)

オオシラビソ 葉は短い。葉に隠れて枝がよく見えない
シラビソ 葉は細長い。隙間から枝が見える

オオシラビソとウラジロモミの違い

オオシラビソの若枝には赤褐色の短毛が密生する2)。ウラジロモミは無毛のためここを見れば確実に見分けられる。

オオシラビソ 赤褐色の短毛が密生
ウラジロモミ 若枝は無毛

オオシラビソとモミの違い

モミは葉先が大きく2叉して尖るため一見して区別できる。またモミは低標高地に生えるため普通混生しない。

オオシラビソ 葉先は丸い
モミ 葉先は2叉し尖る 

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文(著) 2014. 『ネイチャーウォッチングガイドブック 四季を通じて樹木を観察する 431種 樹皮と冬芽』誠文堂新光社.

編集履歴

2021/7/1 公開